過失割合について

100対0? 80対20?

明らかに相手が悪い事故なのに保険会社が過失割合を言ってくることが多々あります。そのため、保険会社と過失割合でもめている方も多くいらっしゃると思います。ここでは、過失割合は何かということと、過失割合の決まり方、争い方を説明いたします。

 

過失割合とは

 過失割合とは、損害額について過失相殺をする際の損害の負担割合のことです。

 

過失相殺とは、損害の公平な分担という観点から民法722条2項によって定められたもので、民法722条2項に「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されています。
たとえわずかでも過失(注意義務違反)、つまり、「もし、こういう注意をしていたら事故が回避できた」という事情があれば、過失相殺をされることになります。過失がない場合の典型例は、赤信号停車中に後方から追突された場合や、青信号の横断歩道を横断中の歩行者が自動車に轢かれた場合などです。

双方が動いている車両同士の事故であれば、ケースバイケースではありますが、原則として一方の過失がゼロということにはなりません。

 

過失割合の決め方

では、保険会社は何を基準に過失割合を決めているのでしょうか。

判例タイムズ社が出版している「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率認定基準」という書籍があり、この書籍には実に338種類もの事故態様における過失割合の図が記載されています。その図には「基本的過失割合」が決められています。例えば、交差点内の直進バイクと右折自動車の事故は、基本的過失割合が85対15です(バイクが15です)。

そして、例えば右折の合図を出していなかった、時速15kmの速度違反があったという個々の修正要素を加味して、基本的過失割合を修正します。先の例でいえば、自動車が右折の合図を出していなければ、自動車に不利に10修正しますので、過失割合は95対5になります(バイクが5です)。
保険会社は、今回の事故態様に合致する図を「別冊判例タイムズ38」から探してきて、その図に記載されている過失割合を主張してくるのです。「別冊判例タイムズ38」は、あまり本屋には置いてないと思いますが、一般の方でも入手は可能です。

裁判実務でも「別冊判例タイムズ38」に基づいて過失割合が判断されます。

 

過失割合の争い方

まず、事故態様から、「別冊判例タイムズ38」のどの図が適用される事故かということを判断しなければなりません。
 次に「速度違反」や「合図を出していなかった」という修正要素の有無を探します。
 
事故態様について当事者双方に言い分の食い違いがなければ良いのですが、「合図をした・しない」「信号は青だった・黄色だった」というように事故態様の主張が双方で異なっている場合は、ご自身の事故態様を裏付ける資料が必要となります。
 
まずは警察官が作成する実況見分調書(現場見取図)が基本になります。
もっとも、事故直後の被害者は救急車で搬送され、加害者のみの説明で実際の事故態様とは異なる実況見分調書が作成される時もあります。
 そうした時は、実況見分調書をもとに、車両の傷のつき方、目撃者の供述調書や実況見分調書、ドライブレコーダーや防犯カメラや救急出動報告書等の入手解析を行い、客観的な事故態様の状況を把握することになります。資料をそろえて事故態様を把握したうえで、「別冊判例タイムズ38」の中から該当する図を探し、個々の修正を行って具体的な過失割合を算定していくことになるのです。
 
実況見分調書や防犯カメラの映像などは、一般の方では入手が困難です。また、防犯カメラの映像には保存期間がありますので、早期に入手しなければなりません。
 

過失割合で保険会社と争いになっている場合は、早期に弁護士に相談しましょう。

 

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