事故による利益はどう扱う?交通事故の損益相殺について

神戸のような大都市で生活する限り、交通事故と無縁ではいられません。ある日突然巻き込まれる可能性がある事故に備えて、日ごろから必要な知識を学んでおくことが大切です。 

交通事故を学ぶ上で重要なのが「損益相殺」という考え方です。日頃あまり耳にする言葉ではありませんが、自己解決には必ずついて回る問題なので知っておいて損はありません。

 

 損益相殺とは、交通事故によって何らかの損害と同時に利益を得たような場合に損害から利益を差し引くことです。

事故による利益なんてあるの?と思うかもしれませんが、例えば事故に対する労災保険から傷害給付金が支払われた時は事故によって発生した利益という扱いになります。死亡事故の被害者の場合は、死亡した時点でそれ以降の生活費が不要になりますから不要になった生活費分に関しては損益相殺によって逸失利益から差し引かれて計算されることになります。

 損益相殺は損害賠償金の調整のために用いられる考え方で、事故によって派生した利益分に関しては損害賠償から差し引かれて計算されることになります。

なぜそのようなことが行われるかというと、損害賠償とは不法行為によって失われたものに対する現状回復のためにあるからに他なりません。

 

 もし損益相殺が行われないまま損害賠償が支払われてしまうと、事故の当事者は事故によって利益を得たことになってしまいます。それでは本来の損害賠償の目的から外れてしまいますから、事故によって発生した利益分に関しては差し引いて損害賠償金額が算定されるルールになっているのです。

 

ただし、損益相殺の対象になる事故によって発生した利益に関する認定は非常に難しく、損害の補填であることが明らかである場合以外は損益相殺の対象にはなりません。

労災保険金でも未受給の場合は損益相殺の対象になりませんが、すでに受給を受けた分に関しては対象に含まれるなど同じ労災保険金でも扱いが異なるので注意が必要です。

 

損益相殺に関しては素人の判断で手続きを進めるのは困難です。

通常は保険会社が業務を担当してくれますが、相手側の保険会社に任せたままだと不利な扱いを受けてしまう可能性があります。

もし交通事故に巻き込まれて損益相殺の手続きを行う必要に迫られたときは、弁護士に相談して一方的に不利益を被らないよう交渉してもらうのが確実な方法です。弁護士と協力することで不利になる損益相殺に抗議したり、算定をやり直してもらうよう求めることも可能になります。

 

 損益相殺は交通事故の損害賠償において重要な考え方ですが、実は明文化された規定はありません。

民法にも相当する法律はなく、あくまでも法の精神を正しく解釈した結果として公平を期すために用いられている考え方です。裁判でも損益相殺については判例が出ていますから、全く根拠のない考え方ではありません。

 
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